受賞の連絡を受けたときのことを覚えていますか。
実感がまったくなかったです。連絡をもらった日は、たしか制作室で別の課題の仮縫いをしていて、そのまま何事もなかったように作業を続けてしまいました。夜になって、少しずつ「あ、そうか」と落ちてきた感じです。
喜びよりも先に、これから自分の作品が知らない人の目に触れるんだという緊張のほうが大きかったように思います。
受賞作《UBUNTU》は、どんなところから始まった作品ですか。
もともとは、人と人の距離のことを考えていました。近づきすぎても遠すぎても成立しない関係みたいなものを、服の重なりで表現できないかと。
だから最初は、もっと説明的なかたちだったんです。それを削って、削って、最後に残ったのが今のシルエットでした。作っている途中は、正直これでいいのか分からなかった。
「削っていく作業のほうが、 足していく作業よりもずっと勇気が要りました」
撮影の現場は、どんな時間でしたか。
自分の手を離れていく時間、という感じでした。フォトグラファーの方やスタイリストの方が入って、僕が思ってもいなかった角度から光が当たって、服がまったく違う表情になる。
正直、最初は戸惑いました。これは自分の作品なのかな、と。でもシャッターの音を聞いているうちに、ああ、これは共同の作業なんだと腑に落ちて。あの瞬間の感覚は、今でもよく思い出します。
これから応募を考えている人へ、伝えたいことはありますか。
完成していなくてもいい、と言いたいです。僕自身、出したときは納得しきれていませんでした。でも、誰かの目に触れて、言葉をもらって、はじめて分かることのほうが多かった。
手元に置いておくと、作品はずっと自分だけのものです。外に出すと、少しだけ自分の手を離れる。その怖さも含めて、経験してみてほしいと思います。